この映画は、30年以上にわたって有機農業に取り組んできた山形県高畠町の人たちを通して、
お金では計れない豊かさを伝えたいと願って制作しました。

まるでわが子を見つめるようなやさしい眼差しで作物を育てている人々。彼らは自然との対話を
大切にしながら、人間の生命を根底から支える食糧の生産に誇りを持ち、日々、額に汗を流し、
安全でおいしい作物を育てています。

そんな高畠の人たちのところには毎年、都会から多くの若者や市民が訪ね、農作業を体験していきます。
彼らは大地を耕す農業の一端に触れ、都市生活では実感することのなかった生命との交歓に
感動して帰っていきます。

お金さえ出せば食べ物は簡単に手に入ると考えがちな飽食の現代、もう一度、食べ物の大切さに
思いを馳せてみませんか。いのちを大切にする有機農業の営みに、生きる喜びを実感してみませんか。

土を耕し、いのちを育てる農業の営みが、農民の魂を育て、都会の人たちの心も耕す。
映画の題名、「いのち耕す人々」に、そんな想いを込めました。いのちといのちとの響きあい、
そして美しい農村の風景と一体となった、ゆったりとした村の生活のリズム。この映画を観るひとは
きっと心のふるさとを探し始めるに違いありません。



なお、映画では20年前に私たちが1年半かけて撮影した未公開のフィルムもふんだんに紹介し、
高畠町有機農業が環境を守るために闘い抜いてきた苦難の歴史も掘り下げました。
 

はらむらまさき
1957年生まれ。上智大学時代にアジアの山岳民族の村を頻繁に訪問し、自然と調和した伝統的焼畑農耕民の知恵に魅せられ、ドキュメンタリー映像作家を志す。84年はじめて高畠を訪れ、映画化を立案、助監督として撮影に関る。04年に長編記録映画「海女のリャンさん」(第2回文化庁文化記録映画大賞、04年度キネマ旬報ベストワン)で200箇所を超える上映を実現。